本草園について

道端の草花を目にして安らいだり、
アロマの香りやハーブティーの味わいに癒されたり、
植物に人の心身を調える力があることは、
多くの人が感じていることかと思います。
私たちの認識もそうでした。
家族の者が心の調子を崩してしまうまでは。

仕事のプレッシャーやプライベートのストレス、年齢的なこと。
何が原因かは分かりませんが、いつの間にか心から活力が失われてしまう。
それは誰にでも起きうることです。
心療内科に通って処方薬を貰ったり、運動や旅行で精神を休めてみたり。
思い付く限りのことを試してみましたが、
心の回復は容易なことではありません。
身体の怪我と異なる心の病は、
時間経過だけでは癒えないことも多いのです。

数年間を要して復調した今も、何が奏功したのかは分かりません。
それでも、毎日の習慣に取り入れて実感した植物の力への驚きが、
ハーブを私たち家族にとって欠かせないものにしてくれました。

振り返ってみると、土地を借りて始めたハーブ栽培も
疲れた心を前向きにしたように思います。

草花への興味に身を任せて、各地のハーブ農家を巡りました。
先人から様々な植物の話を伺い、
泊まり込みの実習に参加してハーブ栽培の奥深さにも触れました。

現在は地元である三重県の里山にささやかなハーブ園を拓いて、
家族の手作業で必要な草花を育てています。

私たちが再発見した植物と人の素晴らしい関係を、
必要とする方々にもお裾分けができる。
今はそのことに喜びを感じています。